仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 声のトーンを落とし、修吾が続ける。


 「むしろ彼女の明るさは強みです。相手の警戒を解き、場を和ませるのは簡単なことじゃない。こちらが硬い顔で交渉しているときに、通訳があの雰囲気を持っているのは救いになります」


 里依紗は瞬きをし、わずかに表情を曇らせた。
 修吾はグラスを置き、視線を正面に戻す。



 「未熟なのは事実でしょう。ただ、成長の余地がある人間にしか、あの吸収力はない。俺は、彼女が時間をかけて必ず力をつけると信じています」


 里依紗は一瞬言葉に詰まり、手元のグラスを揺らした。


 「……なるほど。神谷さんがそう言うと、なんだか説得力ありますね」


 苦笑まじりにそう言いながらも、瞳の奥にはまだなにか探るような光が残っている。


 「ですけどこの前、誌史ちゃんがちょっと愚痴ってたんですよ。仕事のあと、誰かと飲みに行って、つい遅くまで騒いじゃったって」
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