仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「……昨夜?」


 誌史は思わず顔を上げた。

 (それじゃ帰りが遅くなったのはケーキを買っていたからじゃなくて、里依紗さんと飲んでいたから? ……なんで里依紗さんと会ったことは言わなかったんだろう)

 胸の奥がざわつく。


 「神谷さんね、誌史ちゃんは妹みたいなものだって」
 「……妹、ですか」


 やっぱりそうか。心のどこかで薄々感じていた答えを、はっきり言葉にして突きつけられた気がした。
 里依紗はわずかに唇を弧にして続ける。


 「それから、夏生くんとお似合いだって言ってたわ。私もそう思うって意気投合しちゃった」


 胸の奥に冷たい重さがじわりと広がっていく。
 ついさっきまで幸福な気持ちに浸っていたのが嘘のよう。あの時間を思い返すほど、余計に言葉が刺さる。

 ケーキを買って帰ったのは罪悪感の裏返しだったのかもしれない。偽りとはいえ婚約者として振る舞っている誌史に対する、せめてもの償い。そう思った瞬間、あの甘さが少しだけ苦く感じられた。
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