仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
定時を少し過ぎ、オフィスを出る頃にはビルの谷間に夜の風が流れ込んでいた。
昼間の熱気を含んだ舗道はまだ温もりを残しているのに、吹き抜ける風は涼しくて、誌史の肩を撫でていく。
そのひんやりとした感触に、ようやく仕事の緊張が解けるはずだった。胸の奥は、里依紗の言葉が置いていった重さでいっぱいだ。
「おつかれ」
声に振り向くと、夏生が片手を軽く上げて立っていた。いつもの穏やかな笑みを浮かべているが、どこかこちらを気づかう色が混じっている。
「一緒に帰ろうか」
断る理由もなく、誌史は夏生と並んで歩き出した。
通りには仕事を終えた人々が次々と流れ出し、コンビニの灯りや道路脇の街路樹に絡むイルミネーションが夜の空気を照らしている。そんなざわめきの中で、夏生は少しだけ声を落として言った。
「なんか、元気ないね。なにかあった?」
「……いえ、大丈夫です」
言葉とは裏腹に、笑顔を作ろうとした頬が引きつるのが自分でもわかった。
昼間の熱気を含んだ舗道はまだ温もりを残しているのに、吹き抜ける風は涼しくて、誌史の肩を撫でていく。
そのひんやりとした感触に、ようやく仕事の緊張が解けるはずだった。胸の奥は、里依紗の言葉が置いていった重さでいっぱいだ。
「おつかれ」
声に振り向くと、夏生が片手を軽く上げて立っていた。いつもの穏やかな笑みを浮かべているが、どこかこちらを気づかう色が混じっている。
「一緒に帰ろうか」
断る理由もなく、誌史は夏生と並んで歩き出した。
通りには仕事を終えた人々が次々と流れ出し、コンビニの灯りや道路脇の街路樹に絡むイルミネーションが夜の空気を照らしている。そんなざわめきの中で、夏生は少しだけ声を落として言った。
「なんか、元気ないね。なにかあった?」
「……いえ、大丈夫です」
言葉とは裏腹に、笑顔を作ろうとした頬が引きつるのが自分でもわかった。