仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 夏生はしばらく黙って歩き、横顔にちらりと視線を寄越した。


 「神谷さんとのこと、もう無理して続けなくてもいいんじゃないか?」


 優しい声色は確信めいていた。誌史の胸の奥にしまい込んでいた迷いや苦しさを見透かされたようで息が詰まる。
 言葉に詰まって下を向くと、足元のアスファルトに街灯が白くにじんでいた。

 夏生はほんの少し歩幅を緩め、声をひそめた。


 「誌史ちゃんがつらそうにしてるの、見てられないんだ」


 夏生の足が止まる。
 人の波から少し外れた歩道の端。街路樹の影にふたりの影が重なり、車のライトが遠くを流れていく。


 「……夏生さん?」


 問いかけると、彼は視線を前に向けたまま少し深く息をついた。


 「ずっと言わないでおこうと思ってた。でも、もう隠せない」
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