仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 その横顔は、普段の穏やかさの奥に決意が浮かんでいた。

 誌史の心臓がひとつ大きく跳ねる。
 風が吹き抜けて、街路樹の葉がかさりと揺れた。


 「俺……誌史ちゃんが好きだ」


 言葉は静かだった。しかし真っすぐで、逃げ場を与えないほどの熱を帯びていた。
 誌史は返事を探すように唇を開いたが、声が出てこない。胸の奥でなにかが渦を巻き、息をするのも忘れてしまう。


 「神谷さんとの婚約は限定的なものだろう? もう終わりにしてもいいんじゃないか? 誌史ちゃんが苦しそうにしてるのを見ていられない」


 夏生はようやくこちらに顔を向けた。その目には迷いがなく、ただ真摯な光が宿っていた。
 誌史は答えられず、両手を胸の前で握りしめた。夜風が頬を冷やしていく。


 「……ごめんなさい。夏生さんのことは先輩として尊敬していますが、恋愛対象としては考えられません」


 正直に答え、頭を下げる。
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