仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「神谷さんのことが好きなんだろ」


 ドキッとした。まさか夏生に悟られているとは思いもしない。
 顔を上げ、誌史は目を見開く。


 「でもよく考えてみて。神谷さんは恵まれた人間だ。最初から外交官になるのが決まっていたような人。俺たちとは住む世界が違うよ」


 誌史は夏生の言葉に一瞬、呼吸を止めた。胸の奥に、冷たいものがすっと差し込まれる。
 まるで自分の気持ちまで否定されたように響いた。

 そもそも修吾のことを、そんなふうに簡単に括ってほしくない。彼がどれだけ努力してきたか、どれだけ自分を律してきたか。誌史はそれを、少しずつ知ってきた。

 唇をきゅっと結び、視線を夏生から外す。

 街路樹の影が足元に揺れている。それに合わせるように、誌史の心も揺れていた。


 「……神谷さんは努力して、今の地位にいるんです」


 修吾への静かな敬意。そして彼の人生を、たったひと言で断じることへの抵抗だった。


 「え?」
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