仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです

 帰宅すると、玄関には修吾の靴があった。もう帰っているらしい。
 リビングに足を踏み入れると、いい匂いが鼻をかすめた。


 「おかえり」


 キッチンからエプロン姿の修吾が顔を覗かせる。


 『神谷さんね、誌史ちゃんは妹みたいなものだって』
 『ひと回りも年が違う男が、誌史ちゃんに本気なわけがないだろ』


 彼の顔を見た瞬間、里依紗と夏生の言葉が頭を過り、胸に痛みが走った。

 (そんなの私だってわかってる。修吾さんが私を女性として見ていないことなんて最初から)

 だからこそ偽りの婚約者としてもってこいだったのだろうから。お互いに恋愛対象ではないと考えたから、誌史にその役目を頼んだのだ。

 修吾の『おかえり』にすぐに反応できず、一拍遅れて返す。


 「……ただいま帰りました。早かったんですね」
 「出先から直帰したんだ。夕食、食べるだろう?」
 「なにか作ってるんですか? いい匂いがします」
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