仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 集まった人々は皆、燕尾服やイブニングドレスに身を包み、静かな笑みを浮かべながら談笑していた。その華やぎの中に立っていると、自分が異世界に迷い込んだような気がしてくる。

 隣に立つ修吾は、漆黒のタキシードに蝶ネクタイ。背筋を伸ばしたその姿は、彼をいっそう麗しいものにする。外交官としての顔、その堂々とした佇まいに胸がときめくのを止められない。


 『シュウゴ! よく来てくれたね」


 大使のルモアンヌが近づいてきた。当然ではあるが、散歩の途中で出会ったときのラフな装いとは違い、修吾と同じようにタキシード姿はとても威厳がある。

 その隣には妻らしき女性が控えていた。ワインレッドのドレスを纏い、品のある笑みを浮かべている。


 『シュウゴ、お久しぶりじゃないの。婚約者がいるって聞いたわ。いつ紹介してくれるのかと待っていたのに』
 『そうだよなぁ。道端でばったり会って、ぜひうちに遊びにおいでと言ったのはいつだったかな』
 『お待たせしてすみません』


 誌史は大使夫妻と修吾の会話を聞きながら、〝わ~、ちゃんと聞き取れる〟と胸を弾ませる。修吾と再会した交流会ではぽつぽつと単語しかわからなかったのにと感激だ。
 それもこれも修吾のおかげである。
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