仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 『フランス語の勉強、最近どう? 使う機会とかあったりするの?』


 そう尋ねられ、深く考えずに誌史は答えていた。


 『来週ちょうどフランス大使館の会食に修吾さんと出席することになっていて……』


 嘘をつくのも不自然のため、流れで話したのだ。


 「そうですか。今夜は国際交流の関係者も多いですしね」


 修吾は表情を崩さず、里依紗に穏やかに応じる。


 「ええ、とても楽しみにしてきました」


 里依紗は修吾の隣にするりと入り込み、そのまま彼が囲まれていた人々の輪へと加わった。
 次の瞬間、里依紗の口から流暢なフランス語が紡がれる。発音は滑らかで、会話のテンポもまるで母国語のように自然だ。周囲のフランス人たちも感心したように笑みを浮かべ、会話がいっそう弾んでいく。

 その光景を眺めながら、誌史は胸の奥が重たくなるのを感じていた。
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