仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです

 やがて会食はお開きとなり、煌びやかなレセプションルームの灯りがひとつ、またひとつと落ちていく。

 外に出ると、夜風がひやりと肌を撫でた。タクシーのドアを開け、修吾が先に誌史を乗せる。その仕草ひとつにも、なぜか今夜は特別な熱を帯びているように感じられた。

 走り出した車内で、修吾は自然な動作のように誌史の手を取った。指先だけ触れるかと思えば、そのまま指を絡めて握りしめてくる。


 「……っ」


 思わず息が詰まる。逃げようとすればできるのに、握られた手から伝わる温もりに逆らえず、そのまま囚われるように座っていた。

 窓の外を流れる街の明かりが、修吾の横顔を照らしては通り過ぎていく。ときおり視線がこちらに流れ、そのたびに熱を帯びた瞳とぶつかって心臓が跳ねた。


 「誌史」


 低く名前を呼ばれるだけで、胸の奥がじわりと熱くなる。

 (本当にどうしたの? 今夜の修吾さん、なんか変……)

 ふたりきりの密室。走行音と心臓の鼓動だけが混ざり合う。
 握られた手は、まるで恋人同士のようにしっかりと絡み合っている。

 (これも演技? それとも……)

 答えの見えない甘さがじわじわと広がり、ドキドキと戸惑いが入り混じって、誌史は視線を窓の外へ逃がすしかなかった。
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