仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
すれ違う恋心
翌週の月曜日、霞が関の庁舎、欧州局の執務室。
窓際のブラインドから射し込む光は淡く、書類の白さをいっそう際立たせている。机の上には、先週末に開催されたレセプションに関する報告書、さらに来週予定されている欧州連合代表団との協議資料が山のように積まれていた。
修吾はネクタイを指で整えて椅子に深く腰を下ろし、淡々と書類へと目を走らせる。
(大使館での空気感は、やはりそのまま省内の議論にも反映される。些細な印象の違いが、後の交渉で大きな意味を持つ……)
先週末の会話を思い返しながら、頭の中で要点を整理していく。
そこへ、瀬那が声をかけてきた。
「神谷さん、フランス外務省へ送る文書の確認をお願いできますか? こちらはプリントアウトしたものです」
差し出された紙を受け取り、修吾が目を通す。数行の文面から相手の意図を読み取り、すぐに赤ペンを走らせて修正指示を書き加えた。
「この表現だと誤解を招くから、こちらの立場をやわらげつつ、譲歩ではないことを明確にする必要があるだろう。すぐに草稿を直せるか?」
「了解です。ところで……ルモアンヌ大使から聞いたんですけど、神谷さん、婚約してるって本当ですか?」