仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「それじゃ、私はこれで――」
 「ちょっと待て。どこへ行くつもりだ」


 肩を落としながら立ち上がった誌史を修吾の声が追いかける。


 「行くあてはありませんが、ここにもいられないので」


 修吾は少しだけ眉をひそめて誌史を見つめた。


 「この部屋に泊まったらいい」
 「ええっ!?」


 声が思いきり裏返った。


 「ツインルームだから幸いベッドはこの通りふたつある。俺はべつに気にしないし、キミが嫌じゃなければ、ここにいてくれて構わない」


 静かな口調で、事もなげに言う。朝の天気予報で〝今日は一日雨でしょう〟と言うくらいの普通のトーンだ。でも実際は深刻度が全然違う。


 「いえいえっ、とんでもないです」


 誌史は大慌てで、両手を胸の前でひらひら振った。
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