仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 瀬那の目には好奇心と驚きが混じっている。冷静で人を寄せつけない人間に恋人が?と信じ難いのだろう。
 交流会の場でルモアンヌには誌史を婚約者として紹介したが、省内でわざわざその話はしていない。瀬那の耳に入るのが遅くなったのも無理はないだろう。


 「まぁ、そうだね」
 「この頃の神谷さん、雰囲気が変わったと思ったら、そういうことだったんですね」


 そんな目で見られていたとは知らず、つい目を瞬かせる。


 「……って、すみません、余計なこと言いましたよね」


 修吾の反応に焦ったか、瀬那は鼻を擦りながら「すぐに修正しますね」と自分の席に戻っていった

 修吾の手には、タクシーで誌史の手を握った感触がまだ残っている。一瞬、思考がそちらへ逸れそうになり、修吾は意識して視線を資料に戻した。

 (仕事に私情を持ち込むな)

 そう念じるが、フランス大使館で開催された会食で里依紗の口から聞かされた話が頭を過る。
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