仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 一瞬、心臓を掴まれたような感覚に襲われる。


 「それで容態は」
 《意識はあるみたいなんです。……とにかく病院に行きますので》


 声が震えている。慰めの言葉を探しながらも、胸の奥で押し寄せる衝動を必死に抑えた。

 (今、この状況で想いを伝えても……彼女を困らせるだけだ)


 「わかった。俺もすぐに向かう。運ばれた病院を教えてくれ」


 誌史に教わった病院名をメモに書きなぐり、通話を切った。
 喉元までせり上がっていた言葉は、行き場を失って胸の奥に沈んでいく。

 (伝えるべきときは必ず来る。だが今は……彼女の家族が優先だ)

 修吾は上長にひと言断り、庁舎をあとにした。
 
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