仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
夜の帳が下りた『加賀谷医療センター』の正面玄関に、修吾は駆け込むようにして足を踏み入れた。
ガラス扉が開くと同時に消毒液の匂いが鼻腔を刺し、外の冷気とは別種の冷たさが肌を撫でる。
救急外来は白い蛍光灯に照らされ、慌ただしい気配で満ちていた。ストレッチャーが通り過ぎ、ナースステーションからは機械のアラーム音と看護師たちの短く鋭いやり取りが飛び交う。
落ち着いた口調で患者を案内する受付職員の声すら、どこか張り詰めている。
修吾は一瞬、場の空気に飲まれそうになりながらも、ぐっと背筋を伸ばしてカウンターに歩み寄る。外交の場で何度も緊張を潜り抜けてきた修吾でさえ、このときばかりは気持ちが急くのを抑えきれなかった。
「鎌形蛍さんがこちらに運ばれたと連絡を受けたんですが」
自分の声が思いのほか硬く震えていることに気づき、修吾は唇をきゅっと結ぶ。
受付の女性が端末を素早く確認し、顔を上げた。
「はい、鎌形蛍さんですね。現在、救急処置室で診察を受けていらっしゃいます。ご家族の方ですか?」
「……いえ。ご家族の知人です。娘さんから連絡を受けまして」