仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 形式的な答えを返しながらも、焦りは止まらない。

 (誌史が今、どれほど不安な気持ちでいるか……)

 胸ポケットにしまった携帯が熱を帯びている気がする。動揺を隠しきれない誌史の震える声が、まだ耳に残っていた。

 案内された待合の椅子に腰を下ろすと、修吾はようやく息を吐いた。白い壁と天井、無機質な時計の針の音。外務省で過ごす長い会議の時間とはまるで違う。ここではただ待つしかないという事実が、容赦なく心を締めつけてくる。


 「……修吾さん」


 小さな声に顔を上げると、誌史が立っていた。ハンドバッグを握りしめる指が白くなっている。目の下にはくっきりと影が落ち、心労の色が隠せない。
 修吾はすぐに立ち上がり、彼女の肩にそっと手を添えた。


 「大丈夫だ。今、処置を受けていると聞いた。落ち着いて」


 その言葉がどれだけ彼女の支えになっているのかわからない。ただ、自分自身に言い聞かせるように口にするしかなかった。誌史はこくんと小さくうなずいたが、その瞳は不安で揺れている。
< 207 / 289 >

この作品をシェア

pagetop