仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 医師は穏やかに会釈し、続けて視線を巡らせ――修吾の顔で目を止めた。一瞬、驚きの色が浮かび、それが懐かしさへと変わっていく。


 「……修吾、じゃないか?」


 聞き覚えのある声と顔だった。


 「あぁ……(ひじり)、か。そうか、この病院はお前の……」


 加賀谷(かがや)聖。高校時代のクラスメイトだ。
 会うのは十年ぶりくらいか。父親を亡くし、医師を志して必死に勉強していた姿を思い出す。その彼が今、医師として目の前に立っている。名札には〝心臓血管外科〟とあった。

 聖は一度だけ懐かしそうに口元を緩め、それから医師の表情へ戻す。


 「ご安心ください。鎌形さんは軽度の狭心症の発作を起こされたようですが、今は薬で症状も落ち着いています。大事には至っていません。心臓の血管に負担がかかっていたようですが、当面は安静と経過観察で大丈夫でしょう」


 その言葉に、誌史は胸を撫で下ろし、京志郎も深く息をついた。
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