仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「こちらです。入院の準備は整っていますので、安心してください」


 ドアを開けると、清潔なふたり部屋の片隅で誌史の母、蛍がベッドに横たわっていた。点滴スタンドがそばに立っているが、顔色は思っていたよりも穏やかで、安堵の気配が広がる。


 「お母さん!」


 誌史が駆け寄り、手を握る。その声に蛍はうっすらと目を開け、微笑みを浮かべた。


 「……誌史。心配かけたわね」


 か細い声を聞いただけで、誌史の瞳から涙がこぼれ落ちる。


 「もう……無理しすぎなんだから。倒れるまで働くなんて……」


 蛍は苦笑し、申し訳なさそうに目を伏せた。


 「お店のお客さんが重なって、つい張り切りすぎちゃったのよ」
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