仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 里依紗の笑顔は穏やかなのに、その言葉は冷たい刃のように胸に突き刺さった。

 (やっぱり、修吾さんは終わりにするつもりなんだ)

 頭の中で里依紗の言葉が反響し、景色が揺れる。
 フランス大使館でのパーティーの夜、修吾から感じた熱や、指先に残る温もりは、ただの気まぐれだったのだろうか。


 「……そうですか」


 なんとか笑みを作って返した声が、自分でも情けないほど震える。


 「それに……夏生に告白されたんでしょう? 聞いたわよ。ふたり、お似合いだもの、いいと思うな」


 里依紗が軽やかに続けたひと言は、誌史の耳を素通りしていく。心に引っかかる余裕もなく、ただ『そろそろ婚約者のふりも終わりにする頃かな』という修吾の言葉だけが何度も頭の中で反響していた。

 (修吾さんに直接聞いてみたい。だけど……)

 問いただせば、すべてが崩れてしまうかもしれない。そう思うと、言葉が喉につかえる。

 (怖い。……真実を知るのが)

 足を止めかけた誌史に気づいたか気づかなかったか、里依紗は変わらず涼やかな笑みで見つめていた。
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