仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
十一月上旬の朝、霞が関の空には薄曇りが広がっていた。街路樹のいちょうは黄色に色づき、歩道を行き交う人々のコートの襟元に秋風が忍び込む。
その日、欧州局主導の多国間プロジェクトに関する会議が外務省の国際会議室で開催された。厚い絨毯が敷かれた広々とした部屋には、各国からの代表団が整然と並び、同時通訳用のブースには誌史と里依紗の席も用意されていた。
ブースの近くでは、部長や夏生たち、ブルームコミュニケーションズの人間が見守る。
席に着いた瞬間、視線の先に修吾の姿を見つけ、誌史の胸は跳ね上がった。濃紺のスーツに身を包み、堂々と代表団の一員として座る姿がある。長い間会っていなかったわけじゃないのに、なぜか遠い日々のように感じる。
(……修吾さん)
目が合った気がして、慌てて逸らした。胸が熱くなるのと同時に、冷たい恐怖が背を伝う。
(もうすぐ私たちの関係は終わってしまうかもしれない)
そう考えると、心がぐちゃぐちゃにかき乱される。だがここは仕事の場。プロの通訳として立っている以上、感情を顔に出すわけにはいかない。
「気を引きしめて……集中しなきゃ」