仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 誌史は畳みかけるように、会話のテンポを崩さず次の発言も即座に訳していった。専門用語をきちんと押さえた簡潔な日本語に変換するたび、各国のメンバーが理解の色を示す。

 (大丈夫。できる。私なら――)

 そう自分を鼓舞しながら声を重ねていくと、さっきまで重苦しかった会場の空気が少しずつ澄んでいくのを感じた。

 視線の端で、修吾がこちらを見ていることに気づく。真剣な瞳が〝大丈夫だ〟と語りかけてくれているようだった。

 冷や汗を背中に感じながらも、誌史はマイクを置いた。会議室の空気が安定を取り戻すのを確かめ、ようやく胸の奥で小さく息を吐く。
 悔しさと羞恥か、里依紗は唇を噛み、立ち尽くしていた。
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