仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
会議終了後の控室には、重苦しい空気が漂っていた。
長方形のテーブルが中央に据えられ、壁際には予備の椅子や簡易なキャビネットが並んでいる。窓は厚手のカーテンで覆われ、蛍光灯の白い光だけが冷たく室内を照らしていた。
テーブルの周囲には部長や夏生以下ブルームコミュニケーションズのスタッフはもちろん、依頼主である欧州局の面々が修吾も含めて着席している。全体で十人余り。誰もが張り詰めた表情をしており、紙をめくる音ひとつにも神経が触れるような緊張が漂っていた。
里依紗はテーブルの端に立たされるようにしていて、目の前に部長が座る。誌史は里依紗の少し後ろに控え、夏生やほかの者たちは壁際で事の成り行きを見守っていた。
椅子に深く腰かける者は腕を組み、立つ者は息を呑む。狭くはないはずの空間が、緊迫した沈黙に押し縮められたように感じられた。
「近藤さん、これは重大な規律違反だ。通訳の信頼を揺るがしかねない行為だとわかっているのか!」
部長が声を荒げる。同僚の目撃証言により、里依紗が誌史の資料を差し替えたことが判明したのだ。
「な、なにかの間違いです!」
顔を真っ青にして里依紗が弁明する。