仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
修吾の部屋に詩史が宿泊する手続きをフロントで済ませ、彼に連れていかれたのは、ホテルから歩いて数分という距離にあるレストランだった。
店内に足を踏み入れた瞬間から、そこはまるで時を超えた別世界。バロック調のインテリアは豪華絢爛で、息を呑むほどの美しさ。天井には繊細な細工が施され、中央にはシャンデリアが幾重にも煌めいている。
壁一面にはフランスの風景を描いた何十枚もの絵画が並び、それぞれが異なる季節や時間帯を映し出している。セーヌ川沿いの黄昏、プロヴァンスのラベンダー畑、モンマルトルの朝靄など、絵画の中に吸い込まれそうなほどの臨場感だ。
「素敵……」
声に出さずにはいられない圧巻の空間だった。
テーブルにつくと修吾はメニューを開くことなく、慣れた様子で料理を注文した。この店の空気を肌で覚えているかのような自然さ。誌史に苦手なものや好みをさりげなく確認するその口調には押しつけがましさも気取りもない。