仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「おしゃべりは終わり」


 誌史の唇に人差し指をあて、蠱惑的に微笑む。その笑みに、胸の奥で甘い疼きが止まらない。

 ベッドサイドの控えめについた照明が修吾の輪郭をやわらかく照らし、誌史の心は緊張と幸福が交錯する中で、まるで花開くように熱を帯びていく。
 再び唇が重なる。修吾の手はゆっくりと誌史の頬から首筋へと滑り、パジャマのボタンにかかった。ボタンがひとつずつ外されていくたびに、体が小さく震える。

 無意識に手を伸ばし、修吾の胸元にそっと触れた。彼の心臓の鼓動が指先に伝わり、誌史のそれと共鳴する。

 額に鼻先に頬に、順番に落とされていくキスは愛を刻むように丁寧で、それだけで心は満たされていく。目を閉じ、その感触に身を委ねているうちに素肌が徐々に露わに。恥ずかしさで顔を背けそうになるが、修吾の優しい視線に引き戻された。


 「隠さないで。全部、俺に見せて」


 キスに気を取られているうちに体を覆っていたものはすべて取り除かれ、修吾自身も素肌を晒していた。

 重なる体温は心地よさの反面、刺激に満ちていて、誌史の体を芯からとろけさせていく。修吾の肌の温かさ、息遣い、すべてが誌史を安心させ、同時に高揚させた。

 初めての瞬間が、こんなにも幸せで、甘く満ち足りたものになるとは想像もしていない。


 「愛してる……」


 愛の言葉を幾度となく繰り返し、ふたりだけの夜は深い愛と幸せに包まれて更けていった。
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