仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「あっ、これは前にもちらっと話したことがあると思うんですけど、中学生のときに家族旅行でワシントンDCに行ったときに助けてくれた大使館の職員から別れ際にもらったんです」


 そう言って誌史はピンバッジを懐かしそうに撫でた。


 「大事に持っていてくれたのか……」


 気づいたときには、修吾の口からそんな言葉が漏れていた。


 「……え?」
 「それ、俺があげたんだ」


 誌史の目がみるみる大きくなっていく。


 「それじゃ、あのとき助けてくれたのって、修吾さんだったんですか?」
 「ああ」


 空港で困り果てていた誌史たち家族に代わり、空港の係官に交渉したのは修吾だった。無事に話が済んでも不安そうにしていた少女の心を、少しでも軽くしてあげたいという一心であげたのが、星をかたどったピンバッチだった。
 トラブルで大使館を訪れる子どもたち用に、修吾は普段からその手の物を用意していたのだ。
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