仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「信じられない。本当に……?」


 誌史が声を震わせる。


 「まさか、あんなところで再会するとは俺も思ってなかった」
 「もしかして……パリのカフェで出会ったときに気づいていたんですか?」
 「面影があったから、もしかしたらとは思ったけど確証はなかったんだ。でもその後、誌史がトラブルに遭ったときの話をしていたから」


 やはりあのときの少女だと確信した。

 ワシントンDCの日本大使館に赴任したのは外交官になって三年目のことだった。初めての海外勤務、慣れない外交儀礼に疲弊する毎日。自分の存在がこの街にとってどれほどの意味を持つのか、答えを見つけられずにいた。

 その日、修吾はダレス国際空港へ向かっていた。研修員の到着を迎える予定だったが、到着ロビーで目にしたのは、明らかに困惑した様子の日本人家族だった。係員と父親が激しく言い合っている。母親は不安げに書類を握りしめ、少女は心細そうに立ち尽くしていた。


 『どうされましたか?』
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