仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「誌史さんはどんな仕事を?」
 「通訳の見習いです。まだ英語だけですが、ほかの言葉も操れるようになるのが目標です」


 修吾は少し目を見開き、それからグラスを手に取りながらゆっくりとうなずいた。


 「通訳か……。言葉って、ただ訳すだけじゃなくて、空気や感情まで汲み取らないといけないだろ?」


 その声には表面的な称賛ではなく、実感のこもった敬意が滲んでいた。
 誌史は自然と背筋を伸ばす。


 「はい。まだまだ勉強中ですけど……いつか、ちゃんと伝えられる人になりたいなって」


 修吾は静かに微笑んだ。


 「いい目標だ。俺も職業柄、海外の人と仕事をする機会が多いけど、通訳の人がいるだけで場の空気がまるで違う。安心感があるんだ」
 「でも神谷さんは外交官だし、外国語はペラペラですよね? フランス語は現地の人!?ってくらいですし」
 「さすがにオールマイティではないからね」


 たしかにそうだ。世界には七千語以上の言語があると聞く。
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