仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 次の瞬間、唇が静かに触れ合った。
 長い時間をかけて辿りついた答えを、言葉よりも深く伝えるように。

 重ねていた唇を離すと、誌史は小さく息を呑んで微笑んだ。


 「……今のも、ご褒美ですか?」


 冗談めかした問いに、修吾は目を細めた。


 「いいや、まだ途中だ。パリでも続きがある」
 「ふふっ……約束ですよ」


 笑いながら、再び唇を寄せ合う。

 外ではまだ勢力を保つ冬の風が街路樹を揺らしているが、この瞬間だけは世界が春の入口に立ったようだった。
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