仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
ふたりの続きを紡ぐために
春のパリは、あの日と同じようにやわらかな光に包まれていた。
石畳に反射する朝の陽射しが、街全体を金色に染め上げる。セーヌ川沿いの柳は若葉を揺らし、橋の欄干には羽を休めた白い鳩。通りにはバゲットを抱えたマダムが自転車で軽やかに通り過ぎ、犬を連れた紳士が「ボンジュール」と穏やかに声をかける。カフェのテラスからはエスプレッソの香りが漂い、街角ではアコーディオン弾きが懐かしいメロディを奏でていた。
(不思議なくらい、あのときと同じ)
すべてがあの日の記憶と重なり、誌史の心を温かく包み込んだ。
そんな中、誌史はキャリーバッグではなく、修吾と手を繋いで歩く。その優しい手の感触が与えてくれる安心感はとても大きい。
ふたりはモンマルトルの丘を下り、セーヌ川沿いの遊歩道をゆっくりと進んでいた。川面には観光船がゆったりと滑り、船上の人々が手を振る姿が遠くに見える。
「修吾さんとこんな風にパリを一緒に歩くなんて、想像もしていませんでした」
幼いときに助けてくれた外交官が、大人になった誌史をパリで再び助け、そして今、かけがえのない人となって隣にいる不思議。小さな出会いが、誌史の未来を大きく変えたのだ。