仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 修吾の瞳は今も変わらず静かな強さを湛えているが、あの日よりも距離はずっと近い。


 「ここのカフェオレ、とっても美味しかったので、修吾さんも気に入ると思います」
 「それは楽しみだ」
 「だけど、またここに来られて本当に嬉しい」
 「そうだな。でも……」


 修吾がなにかを思い出したかのようにクスッと笑ったため、誌史は首を傾げる。


 「なんですか?」
 「ホテルの予約は、次も俺が担当する」
 「あ、ひどい! もうあんなミスは絶対にしません!」


 いたずらっぽい目をする修吾に、誌史は頬を膨らませて抗議した。

 あのときの悪夢は今思い出してもぞっとする。その反面、どんなときも冷静な修吾の姿に救われ、心を惹かれたのも事実だ。


 「じゃあ次は誌史が予約して、俺は〝万が一のために近くのホテルを三軒くらいチェックしておく係〟ってことで」
 「もうっ!」


 誌史は笑いながら、修吾の腕を軽く肘で小突いた。ふたりの楽しい声がパリの空に溶けていく。それはとても穏やかなのに、心弾む時間だった。
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