仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
カフェを出たふたりはセーヌ川沿いをゆっくりと歩きはじめた。
優しい風が川面を撫で、柳の若葉が揺れる。遠くに見えるエッフェル塔の先端が、淡い空に溶け込むように浮かんでいた。
観光客や地元の人々が、思い思いに散歩を楽しんでいる。川沿いの古本屋台では、色褪せた本や絵葉書を手に取る人々の姿が見えた。
誌史は立ち止まり、修吾と一緒に古いポストカードを眺める。そこには昔のパリの街並みが描かれていて、どこか懐かしい気持ちにさせられた。
手を繋いで再び歩きながら、修吾がふと呼びかける。
「誌史」
そっと彼の横顔を見上げる。
「俺は誌史に出会ってから、いろんなことが変わった。仕事への向き合い方も、人との関り方も。誰かとの未来を考えるようになったのも、誌史と出会ったからだ」
ふたり揃って足を止める。
修吾はジャケットの内ポケットに手を伸ばし、小さな箱を取り出した。
「……え?」