仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 (それって……)


 「これから先もずっと一緒にいよう」


 修吾が箱を開けると、朝の光を受けてきらりと輝くひと粒ダイヤのリングが現れた。


 「誌史、俺と結婚してほしい」


 思いがけないプロポーズだった。誌史の胸の奥から、熱いものが込み上げてくる。

 言葉が通じず涙ぐんだときも、ホテルで途方に暮れたときも、仕事でミスを続けて落ち込んだときも、修吾はいつもそばで支えてくれた。
 いつだって修吾の存在が、誌史の心を強くしてくれたのだ。


 「……嬉しいです」


 声が震えそうになるのを堪えながら応えた。


 「はい。一生そばにいさせてください」


 修吾は指輪を取り出し、誌史の左手の薬指にそっとはめた。

 引き寄せられるようにして唇が触れ合ったタイミングで、ノートルダム大聖堂の鐘の音が遠くから響く。セーヌの水面がきらめき、まるで世界がふたりを祝福しているようだった。

 偶然ではなく、必然的に出会ったふたりの未来。パリの空の下で交わされた約束は、これからの日々を照らす光になる。

 誌史は修吾と再び手をつないで歩きだした。エッフェル塔のほうへ、ゆっくりと。古い石畳を踏みしめながら、物語の続きを自分たちの足で紡いでいくために。
< 276 / 289 >

この作品をシェア

pagetop