仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
番外編
フランス旅行から帰国した二週間後、誌史は緊張の真っ只中にいた。これから修吾の家族に結婚の挨拶をしなければならない。
お泊りセットを用意するように修吾から言われたため準備してきた。もしかしたら今夜は彼の実家に泊まるのかもしれない。
そう思うと、緊張はさらに輪をかけた。
彼の実家の庭先に止めた車の助手席から降り立つと、風がやわらかく頬を撫でていく。新緑の匂いが混じったその風は少しだけ湿り気を帯びていて、夏の気配をほんのり含んでいる。
季節は静かに次の章へと歩みはじめているのがわかり、自分もまた、ひとつの節目を迎えて新しい扉の前に立っている気がした。
誌史が軽く深呼吸をすると、ラベンダー色のミモレ丈ワンピースの裾が軽く揺れる。
「緊張しなくても大丈夫だ」
修吾が誌史の背中を優しくトントンとする。
「……はい」
笑みを浮かべたつもりだが、引きつったのが自分でもわかった。
(あ~っ、ほんとにどうしよう)