仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 二度も助けてくれた修吾に勧められた料理を食べない選択肢はない。誌史は意を決し、フォークを手に取った。

 (大丈夫。だって料理として出されているものなんだもの。雨上がりにいるカタツムリとは別物なのよ。こっちは食べ物)

 そう自分に言い聞かせ、修吾の視線を感じながら恐る恐るひとつ口に運ぶ。

 (……ん? あれ?)

 想像と違う。濃厚なバターとハーブの風味が広がり、意外なほどクセがなく、むしろ滋味深い。


 「美味しい!」


 誌史の感想に、修吾が満足げに微笑む。


 「驚きです。こんなに美味なんて知りませんでした! これは食べなきゃ損ですね」
 「気に入ってもらえてなによりだ。だからといって、日本でカタツムリを捕まえて食べるのはおすすめしない」
 「子ども扱いしてます? これでも一応、成人してますから」


 いたずらっぽい目をする修吾に胸を張る。そのくらいは心得ているつもりだ。

 修吾がクスッと笑う。そんな冗談を言うような人とは思わなかった。きっと本来は気さくで楽しい人なのだろう。


 「でも神谷さんに勧められなかったら、私きっと一生食べなかったと思います」
 「それなら勧めた甲斐があった」


 修吾は誌史の言葉に目を細め、嬉しそうに笑った。
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