仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「やだ、私なに言ってるんだろう。そんなことを言える立場じゃないのに……!」


 ここは修吾の部屋だ。いくら大人の色気にあてられたのだとしても、厚かましいにもほどがある。
 修吾は少し驚いたように目を瞬かせたあと、ふっと笑みを零した。


 「ありがとう。もらうよ」


 その声の穏やかさが、誌史の慌てぶりをいっそう際立たせる。意識しているのが自分だけのようで、余計に恥ずかしい。
 誌史は急いで立ち上がり、ミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。頬が熱い。
 
 修吾は受け取った水を軽く振ってから、キャップを開けた。ひと口飲んだあと、誌史に優しげな目を向ける。


 「なにもしないから。安心してくれ」
 「は、はいっ、わかってます。神谷さんが私なんて相手にするわけがないって。でもその……こういう状況は初めてなので……」


 誌史は両手を懸命に振り、しどろもどろで続けた。


 「いや、そういう意味じゃなくて。……まぁともかく、少し落ち着こう。誌史さんも水、飲むか?」
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