仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 普段から気さくなふたりは、肩に力の入りがちな誌史をリラックスさせる存在だ。そのやりとりを見ているだけで脱力できる。


 「ほら、俺たちも仕事仕事」


 言い合いを強引に切り上げ、夏生と里依紗は「じゃあね」と手をひらりと振って離れていった。
 
 誌史も気持ちを切り替え、ノートパソコンを開く。明日行われるフランス大使館との文化交流会に関するブリーフィングを表示させた。通訳として未熟な誌史はあくまでもサポートとして参加する立場だが、事前に用語や背景を調べるのは欠かせない。


 「ここは〝共創〟って訳すのかな、それとも〝協働〟なのかな……」


 誌史は小さく呟きながら、一つひとつのニュアンスを確認していく。

 言葉は、ただの記号ではない。話し手の思想、聞き手の期待、そして場の空気すべてを織り込んで初めて成立するものである。

 そうして資料と睨めっこして一時間が過ぎた頃、夏生が声をかけてきた。


 「誌史ちゃん、明日の打合せがはじまるよ」
 「あっ、はい」
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