仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
文化交流会の会場は、都心の一角にある歴史的な洋館を改装したホールだった。
高い天井には繊細な装飾が施され、シャンデリアの光がやわらかく床に落ちている。壁にはフランスと日本の伝統工芸品が並び、両国の文化が静かに語り合っているようだった。
窓際には白いリネンで整えられたテーブルが並び、グラスや資料が丁寧に配置されている。スタッフが忙しく動き回る中、すでに数名の来賓が談笑をはじめていた。
フランス語と日本語、英語が飛び交い、空間全体がまるで言葉の舞台のように響いている。奥のステージには両国の国旗が並び、背後には〝日仏文化交流会〟の横断幕が掲げられていた。
壇上にはピアノが置かれ、後半には音楽パフォーマンスも予定されている。香りは控えめな花々のアレンジメントから漂い、緊張感の中にも華やかさと穏やかさが共存していた。
普段はオフィスカジュアルが多い誌史だが、今日はグレーのきっちりとしたスーツを着ている。文化交流会のようなフォーマルな場では、通訳は目立ちすぎず品よく調和することが求められるのだ。
誌史は会場の隅で通訳者としての立ち位置を確認しながら、胸の奥で静かに気持ちを整えた。
来賓のスピーチが一段落し、会場が歓談の時間に移ると、誌史は資料を手に控えてスペースへと向かった。通訳者のサポートとしての役割は一旦終わり、あとは来賓同士の交流を見守る時間だ。