仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「元気だった?」
 「はい。神谷さんは?」
 「おかげさまで」
 

 素敵な微笑みとともに返され、思わず瞳が左右に揺れたため、誌史はうなずきながら手にしていた資料を持ちなおして誤魔化した。


 「改めて、パリでは本当にありがとうございました」
 「いや、俺も楽しんだから」
 

 一瞬浮かれそうになったが、気遣いの言葉だと思いなおす。ひと回りも年下の誌史と一緒にいて、そこまで楽しいはずがない。親戚の女の子をあやすのと同レベルだろう。

 そのとき、背後から聞き慣れた声が届いた。


 「誌史ちゃん、こちらの方を知ってるの……?」


 振り返ると、濃紺のパンツスーツがひときわ映える里依紗が近づいてきた。すぐ後ろには、夏生が資料を小脇に抱えてついてくる。


 「あ、えっと、パリで助けてくださった方です」
 「えっ!? 例の人?」


 里依紗は合点がいったように目を大きく見開いた。
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