仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「〝みたい〟ではなく本物です」


 詩史の肩を引き寄せ、自分の隣に立たせる。ルモアンヌのときのように、里依紗と夏生に紹介するかのよう。


 「神谷さん!? なにを言ってるんですか!?」


 激しく目を瞬かせて修吾を見上げる。


 「そうですよ、悪い冗談はやめてください」
 「私たちの前では演技しなくていいんですから」
 

 夏生と里依紗が詩史に応戦するが、修吾は真顔を崩さない。


 「演技といえば演技ですが、冗談ではありません。どこで大使の耳に入るかわからない。ここはしばらく婚約者として通したいと思います」
 

 ふたりに淀みなく言ってから、涼しげな目で詩史を見つめる。


 「いいよね? 詩史さん」


 やわらかい声でありながら、否定を許さない強さが秘められていた。きっと本気だ。
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