仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 助けてくれた人を邪険にするわけにはいかない。
 「ナンパじゃないから心配しなくていい」と付け加えた彼に、誌史は笑い返した。
 そもそも洗練された大人の男性であるこの人が、社会に出たての誌史などを女性として見るはずもない。

 (……なんだか緊張する)

 それは、男性がフレンドリーとは言い難い雰囲気を纏っているからだろう。どことなく近寄りがたいオーラを感じる。

 (初対面だから仕方ないか)

 ほどなくして運ばれてきたカフェオレとアロンジェ――いわゆるブラックコーヒーでお互いに喉を潤す。


 「さっき、ここではスイーツは食べられないって言っていましたけど、ここってカフェとは違うんですか?」


 周りをさっと見回し、思い切って問いかける。見るからにカフェの雰囲気が漂っているが、誌史の勘違いだろうか。


 「日本でいうカフェと、こっちのカフェは違う」
 「えっ、そうなんですか?」
 「フランス人にとってカフェはおしゃれで特別なものでも、テンションの上がる場所でもない。休憩やトイレだったり、時間を潰したりといった外出中の避難所といった位置づけだ」
< 6 / 289 >

この作品をシェア

pagetop