仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 彼はそう言って、詩史のグラスに軽く自分のグラスを合わせた。


 「たとえば乾杯のときに目を合わせるとか」


 詩史は慌てて彼の目を見た。深い色をした瞳が、真っすぐに自分を捉えている。
 心臓が跳ねた。


 「……それだけで、そんなふうに見えるんですか?」
 「案外、そういう小さなことの積み重ねが効くものだ」


 修吾は微笑みながら、ナプキンを膝に整えた。


 「でも、無理に演じる必要はない。詩史が自然にできる範囲でいい」


 修吾の言葉に再び心臓が跳ねた。


 「い、今……」
 

 誌史を呼び捨てにしたのだ。それもさらっと、ごく自然に。


 「同僚が〝ちゃん〟づけなら、婚約者の俺は呼び捨てじゃないと」
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