仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです

 誌史と修吾を乗せたタクシーが緩やかに減速し、静かな住宅街の一角に停まる。誌史がひとり暮らしをしているマンションの前である。
 ベージュの外壁にブラウンのタイルがアクセントとしてあしらわれたそれは、都心から少し離れた場所にある。築年数がかさんでいるため、家賃が手頃なのはなにより助かっている。


 「今日はごちそうさまでした」


 自分が食べたぶんは支払いたかったが、ひと回りも年下の誌史に割り勘はさせられないと頑なに拒絶されてしまった。
 お礼を言ってタクシーを降りると、修吾まで降り立つ。


 「部屋の前まで送るよ」
 「いえっ、ここで大丈夫です」
 

 部屋はもう目と鼻の先。そこまで面倒はかけられない。


 「恋人なら、そうするもの」
 「……そういうものですか?」
 

 修吾はうなずいてから運転手に「少し待っていてください」と声をかけ、マンションのエントランスに向かって歩きだす。誌史は小走りでそのあとを追いかけ、エレベーターに乗り込んだ。
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