仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「どんな話をしたの?」
 「婚約者としてどう振る舞ったらいいかとか、あとは当たり障りのない話を……」


 修吾の顔がチラつき、鼓動が乱れる。

 (あのキスはきっと挨拶みたいなもの。修吾さんは海外での生活が長かったから、大した意味はないの)

 急いで自分を制す。じつは昨夜からその繰り返し。唇の感触を思い出してはベッドをゴロゴロ転がり、そのたびに動揺するなと言い聞かせた。おかげでほとんど眠れていない。


 「ってか、本気で神谷さんの婚約者のふりをするつもりなのか?」


 夏生は昨日からずっとそれだ。いくら演技だからとはいえ、よく知りもしない人の婚約者など理解し難いのだろう。


 「それは、はい。神谷さんのそばで勉強してきます」
 「勉強って……。ほんとにそれだけで済むのか?」


 夏生が、ぼそぼそとひとり言を言いながらため息をつく。


 「ひと回り離れてるから、神谷さんにとって私は子どもを相手しているも同然でしょうし。なんの心配もいりません」
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