仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
修吾の偽りの婚約者になって一週間が経った。
その間、何度かメッセージのやりとりがあり、時には電話もかかってきた。
業務連絡のような内容もあれば、ふとした雑談も混じっていて、詩史はそのたびに胸の奥が少しだけ熱を持つのを感じていた。
いわゆる〝彼氏〟ができたのは初めて。ただの異性ではなく〝恋人〟なのだ。置かれている状況に浮足立っているといったらいいのか。修吾にというよりは、恋に恋しているような感じだ。メッセージや電話がくるたびにソワソワする。
修吾の声はいつも落ち着いていて、言葉の端々に優しい気遣いが滲む。偽りではあるが、婚約者という立場で交わすやりとりは、誌史にとって特別な響きを持っていた。
出勤してすぐ、詩史は会議室の端にある通訳ブースで、海外クライアントとの商談に向けたリモート通訳の準備を進めていた。
ヘッドセットの接続を確認し、ノートパソコンの画面に目を走らせる。今日の相手はアメリカの企業。専門用語も多く、気を抜けない。
そんなとき、デスクに置いていたスマートフォンが小さく震えた。画面に表示された〝神谷修吾〟の名前に思わず手が止まり、指先で画面をタップする。
【今週末、空いてる?】
なにげない一行のメッセージだった。それだけなのに無意識に頬が緩み、口元に微かな笑みが浮かんだ。
隣の席で資料をめくっていた里依紗が、ちらりと視線を向ける。