仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「なにか、嬉しいメッセージ?」


 詩史は慌ててスマホを伏せながら、「あ、いえ……神谷さんからです」と答えた。
 里依紗の眉がぴくりと動く。

 (いけないいけない。仕事中なんだから、プライベートな連絡は控えないと)

 置かれている状況に浮かれている場合ではないと姿勢を正したが、里依紗はパソコンを操作しながらさらに続けた。


 「彼、なんだって?」
 「週末は空いてるかって。すみません、仕事中に」


 頭を下げると、里依紗は口元にだけ笑みを浮かべた。

 返信は昼休みまでお預け。スマートフォンは伏せたままにしたが、修吾からのメッセージは日常の中に小さな光を灯してくれたようで、少しだけ頑張れる気がする。

 たぶんこれが、彼の言っていた婚約者っぽく見せるための距離感なのだろう。ほんの短いやりとりなのに、彼との婚約が少しずつ現実味を帯びていく気がした。

 (……今はとにかく仕事仕事)

 資料を確認しようと共有フォルダを開いた詩史は、次の瞬間、画面を凝視したまま固まった。
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