仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「パティスリーには日本みたいにイートインコーナーはないのがあたり前。まぁ最近はちょこちょこ増えてるみたいだけど」


 これもまた意外だ。そういった文化はフランスなどのヨーロッパから来たものだと誌史は勝手に思っていた。


 「テイクアウトだけだと、すぐに食べたいときは困りますね」
 「パティスリー近くのカフェは持ち込みOKな場合が多いから、店員に聞いてみるといい」


 有益な情報が次から次へと出てくる。彼からどことなく人を遠ざけるような空気は感じるが、初対面の誌史にいろいろな情報を教えてくれるのだから基本的には優しいのだろう。


 「ちなみにキミが今飲んでるカフェオレは、その存在さえ知らないウエイターもいるくらい今では珍しい飲み物だ。ミルク入りコーヒーを日本人のように食後に飲むフランス人はまず、いないと言っていい」


 そういう裏話はガイドブックにはなかなか書いていない。メモを取りたかったが、キャリーバッグの中のため頭にしっかり叩き込んだ。

 長時間のフライトの疲れを癒せたうえ、たまたま出会った彼のおかげで貴重な話を聞くことができ、誌史は満足感いっぱいにカフェを出た。
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