仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
その週末の午後、誌史は自宅アパートの前で修吾の迎えを待っていた。
七月も半ばを過ぎた陽光は容赦なく照りつけ、アスファルトから立ち上る熱気がじりじりと肌を焦がす。むっとした空気に夏の息遣いが響いていた。
これから向かうのは、彼の友人の誕生日パーティーである。修吾はカジュアルなものだから普段着でいいと言っていたが、そうはいかない。
おそらく集まるのは修吾とそう変わらない年代の人たちだろう。中身はともかく、見た目だけでも背伸びしたい。
昨年、従姉の結婚式のときに着たワンピースを引っ張り出して、自分なりにおしゃれをした。細いリボンがウエストを飾り、軽やかに揺れる膝丈の裾と繊細なレースの縁取りが夏らしい一着だ。
髪はゆるくまとめ、耳元には小さなパールのピアス。普段の自分より大人びて見えるかどうか、不安半分、期待半分だ。
ほどなくすると、誌史の前に黒いセダンが停車した。車種はわからないが、外国産のエンブレムが輝き、高級感を漂わせている。
もしかしたら修吾かもしれないとソワソワしたそのとき、運転席からまさに彼が降り立った。
白のリネンシャツは涼しげでラフな雰囲気を醸し、濃紺のチノパンはすっきりとしたテーパードで品よくまとまっている。
カジュアルながらもどこか洗練されたその姿に、誌史の心は一瞬高鳴った。