仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 その言葉にホッとしつつ、誌史はキッチンへ向かった。

 (とにかく今は、修吾さんの疲れを少しでも取ってあげることを考えよう)

 棚からガラスのティーポットを取り出し、乾燥したハイビスカスの花びらを注ぎ入れる。湯を注ぐと、鮮やかなルビー色が広がっていき、爽やかな酸味を思わせる香りがふわりと立ち上った。
 仕事で疲れた夜、誌史はいつも好んで飲んでいる。

 (修吾さんにもちゃんと効いてくれるといいけど……)

 そう願いながら、透明なティーカップにお茶を注ぎ、トレーに載せてリビングへ戻る。修吾はソファに腰を下ろしていた。ほんの少し肩の力が抜けたように見える。


 「どうぞ。クエン酸が豊富で、疲労回復にいいんです」


 差し出すと修吾は両手で受け取り、静かに口をつけた。


 「……すっきりするな。酸味が心地いい」


 カップをテーブルに置きながら、小さく息をつく。


 「身体だけじゃなく、気持ちも軽くなってくよ」
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