仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 慌てて否定すると、修吾は「それは楽しみだ」と優しく笑った。

 誌史はエプロンを手早く身につけ、キッチンへ向かう。シンクの横で髪をひとつにまとめて冷蔵庫を開けると、卵、トマト、ベビーリーフ、チーズなどが目に入った。

 (オムレツか、サラダ……あ、パスタもありかも)

 頭の中で候補を並べつつ、パスタを探して引き出しを漁る。

 (たしかここに……。あ、あったあった)

 見つけたパスタを手にして修吾のほうに振り返る。


 「修吾さん、トマトとチーズのパスタはいかがですか? ……あれ?」


 苦手な食材は避けようと確認したかったが、反応がない。首を傾げながら修吾のもとへ向かうと、彼はソファに突いた肘に顎を乗せた状態で目を閉じていた。

 (眠ってる……?)

 よほど疲れていたのだろう。スースーと規則的なリズムの寝息が聞こえてきた。

 (起こさないほうがいいよね)

 徹夜続きの彼に声をかけるのは酷だ。かといって、このままの体勢では疲れが取れないだろう。

 誌史は、起こさないように細心の注意を払いながら彼をソファに横たえた。少し窮屈かもしれないが、仮眠を取るくらいなら大丈夫だろう。


 「おやすみなさい」


 寝室から持ってきた薄手の毛布を掛け、部屋の電気を消した。
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