仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 胸の奥に安堵が広がると同時に、昨日までとは違う気持ちが芽生える。疲れを隠し通してきた彼の無防備な寝顔を、自分だけが見ている。そんなことが妙にくすぐったくて、鼓動が速くなる。

 毛布が少しずり落ちているのに気づき、そっと掛けなおす。指先が彼の肩に触れそうになり、思わず息を呑んだそのとき、不意に修吾のまつげが震えた。


 「……おはよう」


 低く掠れた声に心臓が跳ねた次の瞬間、唇にやわらかな感触が押しつけられる。キスされたのだと悟ったのは、彼の唇が離れたあとだった。

 ゆっくり体を起こした修吾が、まだ眠そうに目を擦る。まるでなにごともなかったかのよう。二度目のキスも、一度目同様に突然の出来事だった。

 たぶん、今回のも挨拶のキス。彼にとってはなんでもないスキンシップのひとつなのだろう。

 しかし海外で生活をした経験がない誌史にとって、キスはキス。挨拶とは比べ物にならない、濃密なスキンシップだ。
 目は左右に泳ぐし、心臓は胸の内側でドクンドクンと鼓動を打ち鳴らしている。

 (だけど、ここは平静を装わなくちゃ。きっと大人の女性ならスマートに振る舞うよね)

 どうにかこうにか気持ちを抑え込む。
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